企業分析・業界動向

CO₂回収技術とC1ケミカルの親和性

ハーバー・ボッシュ

新聞で見つけた東ソーのCO₂回収技術に興味を持った

先日、新聞を読んでいると、東ソーのCO₂回収技術に関する記事が目に留まりました。

化学業界のニュースを長年追い続けていると、設備投資や事業再編、生産能力増強といった話題を目にする機会は少なくありません。しかし、今回は環境技術そのものが取り上げられていたことに興味を引かれました。

CO₂回収技術は脱炭素社会の実現に向けた重要な技術として注目されています。私は当初、環境対策の一環としての取り組みだと思っていました。しかし調べていくうちに、それ以上の意味を持つ可能性があると感じるようになりました。

それは、化学メーカーが地球温暖化問題の「排出者」から「問題解決者」へ変わる可能性を秘めているからです。


化学メーカーは「排出者」であり「問題解決者」でもある

化学産業は、私たちの生活を支える重要な産業です。

一方で、エチレンやアンモニアをはじめとする基礎化学品の製造には大量のエネルギーが必要であり、多くのCO₂を排出する産業でもあります。

そのため、化学メーカーは地球温暖化問題において、排出者としての責任を求められる立場にあります。

しかし私は、化学メーカーにはもう一つの側面があると考えています。

それは、新しい技術によって問題を解決できる存在であるということです。

高性能な断熱材、軽量化素材、電池材料、水素関連技術、そしてCO₂回収技術など、脱炭素社会の実現に必要な技術の多くは化学産業から生まれています。

つまり、化学メーカーは温暖化問題の一因であると同時に、その解決策を提供できる産業でもあるのです。


なぜ化学メーカーはCO₂回収技術に注目するのか

化学産業は日本の製造業の中でもエネルギー消費量が多い業界です。

エチレンセンター、アンモニア製造設備、ソーダ工場などでは大量のCO₂が排出されます。

一方で世界的に脱炭素化への圧力が高まっており、単に排出量を削減するだけでは競争力を維持できなくなりつつあります。

そのため近年は、

  • 排出量削減
  • CO₂回収
  • CO₂利用(CCU)
  • CO₂貯留(CCS)

が重要な経営課題となっています。

東ソーの取り組みも単なる環境対策ではなく、将来の事業競争力を左右する投資と考えることができます。


東ソーのCO₂回収技術に可能性を感じる理由

私が東ソーの取り組みに注目した理由は、CO₂回収技術そのものだけではありません。

東ソーは長年にわたり化学品製造技術を磨いてきた企業であり、炭素資源を有効活用する技術との親和性も高いと考えています。

C1ケミストリーは、CO₂や一酸化炭素、メタンなどの炭素数1の化合物を原料として活用する技術分野です。

もしCO₂を効率よく回収し、そのCO₂から新たな化学品や燃料を製造できるようになれば、これまで廃棄物と考えられていたCO₂が「資源」に変わります。

私は、これこそが今後の化学メーカーの生きる道の一つではないかと考えています。

単にCO₂排出量を減らすだけではなく、

「排出したCO₂から新たな価値を創造する」

ことができれば、環境対策と企業の成長を両立できる可能性があります。


東ソーの強みは既存事業との相乗効果にある

東ソーは、

  • クロルアルカリ事業
  • 石油化学事業
  • 機能商品事業

を事業基盤としています。

CO₂回収技術は単独の研究開発テーマではなく、既存事業との相乗効果によって大きな価値を生み出す可能性があります。

私は化学業界の設備投資案件を見てきましたが、大規模プラントでは環境対応技術そのものが競争力になるケースが増えていると感じています。

将来的には、

「どれだけ安く製品を製造できるか」

だけではなく、

「どれだけCO₂排出量を抑えながら製造できるか」

も評価される時代になるかもしれません。


CO₂回収技術は今後の化学業界の成長分野となるか

個人的に注目しているのは、CO₂回収技術そのものが新たな市場を生み出す可能性です。

従来の化学産業では、

  • ナフサ
  • 石炭
  • 天然ガス

などの化石資源が原料の中心でした。

しかし将来的には、回収したCO₂を原料として利用する技術の実用化が進む可能性があります。

もし低コストで大量のCO₂回収が可能になれば、

  • 合成燃料
  • メタノール
  • 化学品原料

などの新しいサプライチェーンが生まれるかもしれません。

東ソーの研究開発は、そのような未来への布石としても興味深い取り組みです。


筆者の視点|東ソーの取り組みから見えるもの

化学業界に長く携わっていると、設備の大型化や生産能力増強が注目されることが多いと感じます。

しかし近年は、

  • 環境対応
  • エネルギー効率
  • 資源循環

といったテーマが企業価値を大きく左右するようになりました。

東ソーのCO₂回収技術は、すぐに業績へ大きく貢献するものではないかもしれません。

それでも、

「将来どのような社会になるか」

を見据えて研究開発を継続する姿勢は、化学メーカーとして重要な競争力だと考えています。

化学メーカーはこれまで「排出者」として語られることもありました。

しかし今後は、CO₂を回収し、利用し、新たな価値へ変えることで、「問題解決者」としての役割を果たす時代が訪れるのではないでしょうか。

新聞で偶然見つけた東ソーのCO₂回収技術の記事でしたが、調べれば調べるほど化学業界の未来を考えさせられるテーマでした。

私は、東ソーの挑戦が化学産業の新たな可能性を示しているように感じています。

ABOUT ME
ハーバー・ボッシュ
ハーバー・ボッシュ
化学業界歴22年|化学商社・化学メーカー経験者
化学業界歴22年以上。 化学専門商社および化学メーカーで、調達・営業・輸出入業務に従事してきました。 基礎化学品、石油化学製品、肥料関連分野、サプライチェーン、化学メーカーの事業戦略などを中心に、実務経験をもとに情報発信しています。 ニュースの要約だけではなく、「なぜその出来事が起こったのか」「業界にどのような影響があるのか」を経験者の視点で解説しています。
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